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2018 [ Nobufumi Ohara / Web ]で制作

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2018年8月7日火曜日

海岸線沿いに過ぎていく旅人と会う


梅雨が明けて、晴天がつづいていた7月の浜辺

海岸線沿いの旅人
浜辺にいると旅人に出会う



静岡県西部地方は浜の海岸線が長くつづいていく。

静岡県中部から先になると、川とか、漁港とか、埋立地とかで、浜辺が切れていくんじゃないかと思う。

その浜辺と言うか海岸線は、愛知県伊良湖岬からずっとつづいている。

このあたりだけのことを思うと、海沿いに、浜を通って日本列島を進んで行けるという思いが生まれても仕方ない、と思う。

気楽に、ずっと浜辺を通って進んでくことができるだろう、と。

浜辺でなくても、海に沿った道を行けば、日本列島を回ることができるということにもなると思う。

ひとが多く住む街があって、いろんな店も宿泊施設もあって旅に便利なのは、海岸線から少しでも入ったところだろう。

が、海岸線やら海沿いの道やら浜やらを進んでいく旅人がいる。

浜の堤防になってもいる、コンクリートの道とも言えそうなところの、そこの浜辺の一番端っこのところで、アコースティックギター弾き語りの練習をしていることがある。

日常的に、そのあたりまでウォーキングをしに来る人達もいるので、一番端まで行ってギターを鳴らすようになった。

そこにいても、なんでこんなところから現れるんだろう、という歩いているひとや、上半身裸、下半ズボンで浜辺を走っていくひとやら、ポケモンゴーをやってるのかなあ? なんてひとを見かける。

ほか、バイクやスクーターで、来れると思ったのかそこまで来てみて引き返すひともよくいる。

そんななかで、このひとは、旅人なんだろうなあ? と思う人も現れる。

自転車で、後ろの荷台にキャンプ道具らしきものをくくりつけて、その先は道が途切れて進めないことを確認すると、そそくさと向きを変えて去っていく。

そんなひとを、そこでギターを弾き始めてから何人か目にしている。

ママチャリに乗った、すごくおしゃれで高そうな服を着ているおじさんがいた。

きれいな格好なのだが、キャンプ道具らしきものを荷台にくくりつけていたので、浜でキャンプして進んでいくんだろうと思ったが、なぜそんなおしゃれな格好なのか、派手目な色使いのシャツと折り目がついたスラックスに高そうなウオーキングシューズみたいなのをはいていた。

そういうひとが、ギターを弾いている私の後ろを通って行く際も、その手の人達は、明るくて、『こんにちは、いやあ、いい天気ですね、ギターですか?」みたいな感じは出さない。

人目を避けて先を急ぐ、みたいな人たちである。

誰にも会いたくない、みたいな。



数週間前になるが、そこに行くのに、東から西に自転車で走っていく間に、あれ? あのひと自分と行先がおなじなのかなあ、と思える人を見かけた。

やっぱりそうで、いつもの場所に行こうとした堤防の上で、そのひととすれちがった。

ひと月前になるが、Youtube で『彼女と彼』という羽仁進監督の映画(1963)を観ていた。

その彼は、バタ屋をやっていて、いつも愛犬と一緒だった。

団地生活の彼女の暮らしなどとの対比が描かれていたのだが、その自転車のひとは、その彼に似ていた。

自転車のサドルは黄色いガムテープでぐるぐる巻きにされていて、荷台にくくりつけてあるキャンプ道具らしきものも、スタイリッシュには見えなかった。

髪は伸び放題だし、髭もそうで、旅人なんだろうけれど、なにか異質な空気感を放っていた。

気になったんだと思う。

自分でも知らないうちに声をかけていた。

「この道はここで切れちゃうんで、もう一度もと来た広い国道に出れば行けますよ。ずっと、海沿いに進んでいけますよ、自転車道があるところもあるし」

そのひとは、わかった、みたいにうなずいた。

「どちらからこられたんですか?」

「山形」

「へー。で、どちらまで行かれるんですか? 」

「沖縄」

「・・・・・」

「・・・・・」

「すごいですねえ、お気をつけて」

という会話をした。

沖縄は、西の方角である。

そのひとははじめ国道で見かけた時は、西に進んでいた。しかし、会話した時は、東に進んでいこうとしているみたいだった。

もう沖縄に行って、山形に帰ろうとしているところだったのか、これから沖縄にいこうとしているとろだったのか、わからなかった。



すごいひとと会っちゃったなあ、なんて思いながらその日は練習した。



このイラストは、Yahoo ! のブログに書いたその映画「彼女と彼」の感想のところに貼った、私のイラスト。
その自転車のひとは、こんな感じのひとだった。






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